<開催報告>SRセミナー2022 第2回「多様な立場から取り組むSDG8『働きがいも経済成長も』~SDGs実現のためのサプライチェーンと人権~」

2023年1月11日(水)、SRセミナー2022 第2回「多様な立場から取り組むSDG8『働きがいも経済成長も』~SDGs実現のためのサプライチェーンと人権~」をひろしまオフィスセンターとオンラインのハイブリッド形式で開催し、約30名の皆さまにご参加いただきました。

○趣旨説明/松原裕樹(NNネット幹事、特定非営利活動法人ひろしまNPOセンター 事務局長)
環境・社会・経済の統合的発展が求められるSDGsの実現に向けて、SDG8「働きがいも経済成長も」の視点から、サプライチェーンにおける人権のあり方を確認し、企業のみならず自治体やNPO/NGO、地域コミュニティなど、あらゆる人や組織がどのように取り組んでいくことが必要か、皆さんと一緒に考えたい。

○「自治体の社会責任(LGSR)への取組は、なぜ必要か、今後どう進めるべきか?」/川北秀人(NNネット幹事、IIHOE(人と組織と地球のための国際研究所)代表者

・国内の公共調達が、どれだけ人権や環境等に配慮・対応できているか。企業だけでなく、国及び都道府県・市区町村や独立行政法人を含めた行政全体にとっても大きな課題だ。中央省庁調達額と自治体調達額の総和としては、自治体の方が大きく、また、持続可能性をより身近な問題と位置付けられるのも、国よりも自治体である。
・今後に向けた提案として、自治体自らと調達先による社会責任への取り組みの意義を定量化・可視化し、国内外の他の自治体の取り組みから学びあう機会づくりを働きかけること、そして、ちゃんと取り組んででいるところを褒めることが必要である。

○「外国人雇用から見たサプライチェーンと人権の現状とこれから求められる取り組みについて」/田村太郎(一般財団法人ダイバーシティ研究所 代表理事)

・2006年に総務省が自治体による「多文化共生推進プラン」の策定を促してから15年以上が経ったが、策定している自治体は140あまり。一方で、同性パートナーシップ制度については、200を超えた。これらに共通することは、国にまだ制度がない中で、自治体が条例など定めることができるもの。社会責任調達と同じように、自治体独自でできることはたくさんある。
・これからの地域で求められる取り組みとしては、外国人雇用の適正化を図り、危機的な人材不足に対応するための施策や外の経済とつながるための施策が考えられる。これは企業任せにするのではなく、地域全体で国際標準に合わせていく必要がある。そして、外国人が地域で安心して暮らすための生活インフラを整えるために、多言語・多文化対応のできる体制の整備や日本語習得機会の拡充が必要であり、相談員や日本語教師や仕事として成り立っていくことが求められる。

○「SDG8に貢献するサプライチェーンと人権」/川北秀人、田村太郎

川北:
2000年頃のグローバリズムには戻らないかもしれないが、一定の保護貿易の考え方のもとでも、生産性の向上のために人権を損なってよいとか、利益のために環境が破壊されてよいということは、許容されない時代になった。ヨーロッパではEU指令などルールで縛り始めており、許されなくなってきている。難しいとわかっていることに向き合うとき、ヨーロッパのように、イノベーションとして取り組むという考え方はとても参考になる。
ルールそのものを変えていく際には、インセンティブとペナルティの両面が必要。これまで企業に訴えてきた背景から、カーボン(炭素)、ネイチャー(自然)、ヒューマンライツ(人権)の3点はセットで取り組む必要がある。
田村:
これまで先進国がCO2を出してきたのに、途上国はこれから出していけないと言っていることと同じように、グローバル化を急に止めて内製化したら、社会はまわらない。
理想はグローバル化の弊害を無くしていくことだが、急にそれを止めたところで機能するのは難しいので、人やモノが動く中でバランスをとることが重要。数世代かかることかもしれないが、人・モノ・資本が動くことを前提とした枠組みを考えていく必要がある。
川北:
日本社会は、定量的な指標を持ちこまないと、理念だけでは変わらない。災害のケースなどがまさしく当てはまる、この地域ではこれくらいの確率で地震や大雨が発生するという情報が必要となる。これも寛容に関わることで、寛容や理解という面から考えると、ヨーロッパでは人権も生産性もどちらも大事だから取り組もうとなるが、日本が転換していくにはどうすればよいか、国のガイドラインも重要だが、自治体の調達を促していくにはどうすればよいと思いますか?
田村:
自治体の調達はそれぞれ基準があるが、その基準をどんどんチェックして見直していくことに尽きる。
自治体がお弁当を発注する際に、その調達基準によってお弁当業界に大きな影響がある。そのためによい基準を推していくことが大事。
川北:
自治体の指標という視点から考えると、外から見たときに参考や評価できるのは人口くらい。
長期的にそこに住み続けたいという面では、文化的な活動の参加度が高いことや、稼ぎ方の進化論を考えていく必要もある。そこで、稼ぎ方の進化論に前向きな自治体は、若者の移動に関して結果が出始めている。積極的な寛容度として、若者のチャレンジを寛容する自治体は、30~40代の残存率が高いという結果が出ている。
経済合理性か人権かという二択で考えるのではなく、ちゃんと自分たちの置かれている課題に対して若者の力を活かしていこうという施策は生きてきているので、外国人でも若者でも誰であっても活躍する人を応援していくということは重要になってくる。
田村:
日本の自治体はこれまで税金を下げることや補助金を出すことなど、安くして人に来てもらおうということをしてきた。これもある意味での調達だったが、そういう時代は終わった。同じ工業団地を作るのであれば、土地代を負けるとか税を減免するといったことでなく、日本語教育が充実していることや外国ルーツの子どもが学校に通えるなど、安心できる工業団地としての付加価値をつくって企業を誘致することが重要。カーボンニュートラルでは同じことが進んでいるので、人権でも同じようにしていかないといけない。
これからの自治体経営では、公共工事の発注やお弁当の調達も同じことが言えるが、住民や事業者に対してどのような施策を出していくか、安さで勝負するのではなくて付加価値が大事になってくる。