自組織のSRの課題がどこにあるのか、弱い部分がどこか、などが判明したら、課題の分野・テーマごとに対策を考えましょう。テーマごとにワークショップを開催したり、チェックシートを用いて取組みの必要性を確認するのも有効です。テーマごとに使えるマニュアルやガイドブック、チェックシート、ワークシートなどを集めましたので、ぜひご参照ください。

*有料の冊子等も含みます。価格・申込み法など詳細はリンク先をご参照ください。

*ここでは、ISO26000の中で「中核主題」として挙げられているテーマごとにツールをご紹介します。各テーマについての説明も青字で記しています。(各テーマの解説文については「やさしい社会的責任」(日本規格協会)を参照しています)

組織統治

組織統治とは、組織の目的を達成するために意思決定をし、実行するシステムのことです。社会的責任を果たしていくうえで、まずは組織の意識向上と基盤強化が重要です。例えば次のようなキーワードが関連します。「社会的責任へのコミットメント・目標の表明」「効率的な資源の利用」「公平な昇進機会」「ステークホルダーとのコミュニケーションプロセスの確立」「意思決定への参画」「決定事項の進捗把握」

<関連ツール>

 ●NGOの危機管理・安全管理ガイドライン

  (特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(JANIC))

  *詳細はJANICにお問い合わせください。

 ●アカウンタビリティ・セルフチェック

  (特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(JANIC))

 ●「エクセレントNPO大賞」の自己評価の15基準

  (「エクセレントNPO」をめざそう市民会議)

  「信頼されるNPOの7つの条件」

  (民間NPO支援センター・将来を展望する会 作成)

人権

人権は、すべての人に与えられた基本的権利です。各組織が組織の活動に関係する組織内外の人々の人権を尊重し、直接的・間接的に人権を侵害することのないよう、配慮していくことが重要です。例えば次のようなキーワードが関連します。「デューディリジェンス」「人権が脅かされる状況」「加担の回避」「苦情解決」「差別及び社会的弱者」「市民的及び政治的権利」「経済的,社会的及び文化的権利」「労働における基本的原則及び権利」

<関連ツール> 

 ●「人を大切に―人権から考えるCSRガイドブック」

  (一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター (ヒューライツ大阪))

 労働慣行

労働慣行には、労働者の採用や昇進、異動、懲戒及び苦情対応制度、雇用の終了、団体交渉など、労働者の基本的権利に関する慣行や方針が含まれます。例えば次のようなキーワードが関連します。「雇用及び雇用関係」「安定的な雇用」「平等な機会の確保」「労働条件及び社会的保護」「社会対話」「労働における安全衛生」「職場における人材育成及び訓練」

<関連ツール> 

 ●基本的な労働法制度・社会保険などについて

  (厚生労働省)

 「知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~」

  (厚生労働省)

 ●「職場におけるメンタルヘルス対策等」ストレスチェック制度等について

  (厚生労働省)

 ●国際労働基準の手引き「グローバル経済のためのルール」(PDF)

  (ILO駐日事務所)

環境

すべての組織は、規模にかかわらず、環境に何らかの影響を及ぼしており、法律、規制の順守に加えて、その活動が引き起こす環境影響に対して責任を負わなくてはいけません。環境に与える影響が不確実な段階であっても、その影響を最小限にするように予防的措置をとることが重要です。例えば次のような措置をとることが期待されています。「汚染の予防」「環境影響、汚染源、廃棄物の特定」「持続可能な資源の使用」「気候変動の緩和及び気候変動への適応」「温室効果ガス等排出の測定、記録、報告」「省エネルギーの促進」「環境保護及び自然生息地の回復」「環境・生物に優しい製品・サービスの使用」

<関連ツール>

 エコアクション21ガイドライン

  (環境省)

エコアクション21は、環境省が策定した日本独自の環境マネジメントシステムです。中小事業者でも取り組みやすい環境経営システムの在り方を規定しています。必ず把握すべき環境負荷として、二酸化炭素排出量、廃棄物排出量、水の使用量を挙げており、それらを削減するための取り組み例を、分かりやすく記載しています。エコアクション21を活用することで中小事業者でも自主的・積極的な環境配慮に対する取組が展開でき、その取組結果をフォーマットに沿って「環境経営レポート」として取りまとめて公表することで社会とのコミュニケーションを進めています。2017年には環境への取組と経営の融合を高めるためにガイドラインが改訂されています。

 環境報告ガイドライン

  (環境省)

 に加え、経営戦略の中でいかに環境課題に取り組んでいくかといった将来志向的な報告を求められています。本ガイドラインは報告書の基礎情報、ガバナンス、戦略等の組織・経営体制情報、重要な環境課題の報告指針です。

 ●ISO14000シリーズ

国際標準化機構 (ISO) が発行した環境マネジメントシステムに関する国際規格 (IS) 群の総称。生産体制や環境管理のシステム、保全体制など、環境に配慮した企業活動を促進するための環境管理の規格で、環境マネジメントシステムの仕様を定めたものです。

*ISO14001のシステムを構築した場合、そのことを自ら宣言する(自己宣言)か、外部の機関に証明してもらう(第三者認証)ことが可能です。第三者認証を受けようとする場合には、財団法人日本適合性認定協会を中心とした審査登録制度があります。

*ISO14000シリーズについての最新情報はこちらをご参照ください。

*「ISO 14001:2015 環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引」こちらのサイトより購入可能です。

公正な事業慣行

公正な事業慣行とは、組織・個人と取引を行う際の倫理的な行動に関する事項であり、この取引関係にはバリューチェーンに含まれる組織や、競合他社、政府なども含まれます。例えば次のようなキーワードが関連します。「汚職防止」「責任ある政治的関与」「公正な競争」「バリューチェーンにおける社会的責任の推進」「財産権の尊重」

<関連ツール>

 ●持続可能な調達についてのISO基準「ISO20400」

バリューチェーンにおける社会的責任を推進するにあたり、あらゆる組織の調達機能に、持続可能な発展に対する責任を統合させるための規格「ISO20400」の策定にむけた国際的な議論が進められています。「ISO20400」は「ISO26000」に関係の深い規格です。社会的責任に対する国際的なコンセンサスが形成され、企業を含めたあらゆる組織は、その決定や活動(製品、サービスおよびプロセスを含む)が社会に及ぼす影響に対して責任を担い、同時にサプライチェーンやバリューチェーンに対しても、その影響力を適切に行使することが求められるようになったという経緯があります。「ISO20400」は、2017年4月に国際規格として発行されました。

*NNネットでは持続可能な調達に関しての勉強会を開催しています。

消費者課題

消費者課題とは、曖昧で不正確な宣伝をすることなどで消費者が不利になることや、安全面に欠陥がある製品を提供して消費者に危険が及ぶことがないようにすること、また消費者がその製品やサービスを使うことで、環境被害が出るなど社会へ悪影響を与えてしまうことがないようにすることなどを指します。自らの組織が提供する製品・サービスに責任をもち、製品・サービスが消費者や社会に対して危害を及ぼさないようにすることが重要です。例えば次のようなキーワードが関連します。「公正なマーケティング、情報及び契約慣行」「消費者の安全衛生の保護」「持続可能な消費」「消費者に対するサービス、支援、並びに苦情・紛争の解決」「消費者データ保護及びプライバシー」「必要不可欠なサービスへのアクセス」「教育及び意識向上」

<関連ツール>

 国連消費者保護ガイドライン(PDF)

  (国際連合 経済社会局)

 ファンドレイジング行動基準ガイドライン(PDF)

  (日本ファンドレイジング協会)

コミュニティ参画

どの組織も、多かれ少なかれ、町内会や商店街、市区町村、都道府県などのコミュニティに属しています。社会的責任を果たすという観点から、組織は自らが属しているコミュニティとコミュニケーションをとり、コミュニティの発展・活性化のために積極的に関与していくことによって、ともに発展をしていくことが重要です。例えば、コミュニティ参画の課題として、下記のようなキーワードが挙げられています。「コミュニティへの参画」「教育及び文化」「雇用創出及び技能開発」「技術開発及び技術へのアクセス」「富及び所得の創出」「健康」「社会的投資」

*コミュニティ参画に関する詳細は、ISO26000の第6章「社会的責任の中核主題に関する手引」の中の「コミュニティへの参画及びコミュニティの発展」を是非ご参照ください。

(参考)複数のテーマにまたがる関連資料

 アジェンダ21 実施計画(PDF)

1992年6月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロ市で開催された地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)で採択された行動計画です。21世紀に向け持続可能な開発を実現するために、各国および関係国際機関が実行すべき行動計画として採択されました。リオ宣言を実行するための行動綱領であり、4つのセクションから構成されています。また、行動計画を実現するための(人的、物的、財政的)資源のありかたについても規定されています。国境を越えて地球環境問題に取り組む行動計画であり、各国内では地域まで浸透するよう「ローカルアジェンダ21」が策定、推進されています。

 ●持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)

2015年9月の「国連持続可能な開発サミット」で合意された新たな開発アジェンダです。

193の国連加盟国が合意したこのアジェンダ「Transforming Our World: 2030 Agenda for Sustainable Development(私たちの世界を転換する:持続可能な開発のための2030アジェンダ)」は、宣言、17の持続可能な開発目標と169項目のターゲット、実施手段と新たなグローバル・パートナーシップに関するセクション、および、再検討とフォローアップの枠組みから構成されています。

 (英文)SUSTAINABLE DEVELOPMENT KNOWLEDGE PLATFORM

 (和文)「持続可能な開発目標ファクトシート」(国際連合広報センター)

 持続可能な開発サミットの概要

 ●国連グローバル・コンパクト 

人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、そして腐敗の防止に関わる10の原則に賛同する組織のトップが自らこのグローバル・コンパクトに署名し、コミットメントすることで、その実現に向けて行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに参加する自発的な取り組み。企業を中心とした様々な団体が、自らコミットメントを表明することで、責任ある創造的なリーダーシップを発揮することが期待されています。

 (英文)国連グローバル・コンパクト

 (和文)国連グローバル・コンパクトのリーフレット

 グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン