SRフォーラム2012分科会1-C ~ISO26000と国内規格JISZ26000とは~

こんにちは、社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク事務局です。

5/17・18に開催いたしました「5/17-18 SRフォーラム2012―社会的責任(SR)から社会的信頼(SR)へ」のレポートを掲載していきます。

続いて、分科会1-C「世界初のSR国際規格『ISO26000』で他セクターとの協働を進める」~ISO26000と国内規格JISZ26000とは~  についてです。

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報告者:関正雄(株式会損保ジャパン)
   :黒田かをり(一般財団法人CSOネットワーク)
   :筒井哲朗(特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会)
進 行:堀江良彰(特定非営利活動法人 難民を助ける会)

まず、堀江から分科会の主旨を説明したのち、関正雄氏、黒田かをり氏から、それぞJISZ26000の概要と、ステークホルダー・エンゲージメントに関する報告をいただきました。両氏による報告後、筒井哲朗氏(特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会事務局長)によるコメントを踏まえ、パネルディスカッション・質疑応答を行いました。以下、当分科会の概要を報告します。

 ISO26000とは、持続可能な発展を実現するために、多様なセクターを巻き込んで開発された、社会的責任に関する初の包括的・詳細な国際規格です。あらゆる組織の自己チェックのために実用的な指針を提供するガイダンス文書で、第三者認証を目的とせず、結果や実効性を重視した内容となっています。2010年11月の発効以来、途上国を含めた各国内で影響を持ち始めています。2012年3月に制定された国内規格JISZ26000は、ISO26000に、解説と、附属書Aに日本独自のイニシアチブを追加したもので、全体の内容はISO26000とほぼ同じです。まえがきから第4章では「社会的責任」の定義や原則が述べられ(Why)、第5章・7章で、組織全体に社会的責任の概念を浸透させるための手法と手引を記し(How)、第6章では社会的責任の中核主題が7つ挙げられています(What)。認証規格ではないためインセンティブを得ることが難しく、とくに中小企業・組織への普及には困難が予想されます。関氏からは、社内に浸透させることが重要であり、最終的には社員一人一人にいきつく問題であることから、優先順位をつけて課題に取り組む、同業者や所属団体などで協働実施するなどの手段が推奨されました。

 ISO26000全体における重要な概念に、「マルチステークホルダー・プロセス」があります。ステークホルダーとは、ある組織の決定や活動に利害関係を持つ個人やグループを指します。分野が広く、利害が複雑に絡み合う社会的責任を議論するにあたっては、背景の異なる複数のステークホルダーが議論に参加し、合意を形成していくことが重要です。このような議論の手法は、多岐にわたる問題の解決に有効であるとして、近年あらためて注目を集めています。効果的に機能するには、全てのメンバーが対等であること、目的が共有されていること、有能なファシリテーターの主導が必要です。
 会場からは企業・NPO/NGO双方からJISZ26000の実用性やマルチステークホルダー・プロセスを機能させる方法などに関して質問がされ、本分科会テーマへの関心の高さが感じられました。JISZ26000の対象は企業が中心ですが、企業のCSR担当者だけではなく、周囲のアクターと共同で取り組むことが、当規格が実行力をもつには必要です。当規格が今後、社会全体へより広く普及することが期待されます。