2014/11/22(土)「進化する地域円卓会議」開催報告

2014年11月22日、中野コングレスクエアで開催された「市民セクター全国会議2014」(日本NPOセンター主催)にて、NNネット主催セミナー「進化する地域円卓会議」を開催しました。

地域の多様な課題に、多様なステークホルダーが協働して取り組みを進めるための対話の機会として全国的に増え始めた「地域円卓会議」。すでに先行している地域では、地域の課題の共有はもとより、具体的な課題解決に向けた協働事業や連携が生まれ、それを機に円卓会議のあり方も進化しています。本セミナーでは、地域円卓会議の取り組みが進んでいる雲南市、みらいファンド沖縄からゲストにお越しいただき、事例を共有していただきました。

雲南市:行政と「地域自主組織」のパートナーシップ

雲南市の板持周治様。地域円卓会議の実践事例をご紹介いただきました

雲南市は広島県の北側に隣接する、島根県東部の人口約40,000人の都市です。全人口のうち、高齢化率は30%を超えます。
雲南市のまちづくりの基本姿勢は「協働のまちづくり」。2004年11月に6町村が合併して市が誕生した後、まずは2005〜2007年にかけて、全地域に「地域自主組織」が住民発意で設立されました。雲南市の地域自主組織は行政の下に位置するものではなく、行政のパートナーとして機能しており、さらに各地域自主組織には事務局体制がしっかりあるのが特徴です。「自分たちの地域の課題は自分たちで解決しよう」、という考え方のもと、各地域の課題にそれぞれ住民主体で取り組まれています。

今回のセミナーのテーマである「地域円卓会議」は、2013年度から本格導入しました。行政と地域自主組織には、それぞれに共通した「防災」「福祉」「生涯学習/社会教育」などの分野・部門があります。雲南市の地域円卓会議では毎回テーマを定め、行政と各地域自主組織の中でその分野に取り組む方々が一堂に会して開催しています。また、課題が共有しやすいよう農村部は農村部、街部は街部どうしで、というように規模別で開催することが多いのも特徴的です。分野ごとに行政と地域自主組織が直接顔を合わせ、地域を横断して話し合う機会があることで課題が共有しやすくなり、また会議開催後にもそれぞれが会議の学びを生かして次の活動につなげていくことができます。

「毎回の会議では意見交換の時間を十分とりながら、グループワークを入れたり、シミュレーションを入れたりして全員が参加しやすい雰囲気を作るよう工夫しています」という板持さん。また、会議ごとに必ずねらいを設定し、会議後そのねらいがどの程度達成されたかを行政・地域双方で確認しているほか、会議の運営自体に改善点がないかも両者で振り返りを行っているそうです。

これまで雲南市の地域円卓会議を開催してきた板持さんは、机を顔の見えるように円卓に配置することは想像以上に重要であること、人数は多すぎない方がいいこと、また長くならないよう途中で区切ることなどが大切だと話しました。また、事前に資料配布し、組織から適した人に出席してもらうことも重要です。進行役は展開をある程度見通しておき、テーマがずれないように気をつける必要があるとのことです。
雲南市 板持周治さんの発表資料はこちら

沖縄:「課題共有型」の二重円卓会議

(公財)みらいファンド沖縄の小阪亘さま(右)、平良斗星さま(左)

(公財)みらいファンド沖縄は、2011年2月からこれまでに21回地域円卓会議を開催してきました(2013年度9件、2014年度3件)。雲南市のように行政の仕組みに落とし込んでいるわけではありませんが、「地域円卓会議はスタート地点」と話す小阪さん。各地域で色々な「困りごと」をテーマに、まずは出席者の間で課題を共有することに重点を置いています。最終的には課題解決のため、行政による政策化や、ビジネスの手法活用しての解決、基金による市民事業などに落とし込んでいくことを目標としています。

「沖縄式」地域円卓会議は1回2時間。テーマは話題提供者が今「困っていること」と具体的に絞ることで、積極的な参加を促しています。会議に参加する全員が課題を共有し、課題解決を目指すために、会議の司会とファシリテーションに非常にこだわっています。今回のセミナーでは、これまでの地域円卓会議のほとんどで司会を務めてきた平良さんもスピーカーとして参加してくださいました。

平良さんはまず、会議のタイトルにとてもこだわっていらっしゃるそうです。こうした会議のタイトルにありがちな「活性化」「居場所作り」というワードはタブー。タイトルを見ただけで、会議のねらいが明確に分かるよう気をつけています。例えば、現在人口が急増している豊見城市(とみぐすくし)で今年9月に開催した会議のタイトルは「行政情報円卓会議『新しくまちに来た住民にどうやって行政情報を届けるのか?』」。具体的なタイトルをつけることで話の粒を小さくし、参加者がこれから何を話し合うのかを明確に示しています。

タイトルの次に重要なのは「キャスティング」。平良さんの肌感覚では、司会を入れて8名がベストな人数と言います。話題提供者は「困っている人」と決め、その困りごとに関係の深い行政部門、専門家、メディア、商工業者、NPO、自治会などから最適な人に会議に参加してもらっています。

2011年から定期的に開催している沖縄式地域円卓会。最近、議終了後名刺交換の場を作りました。こうして顔をつなぐことで、地域円卓会議でできたネットワークを活用して、さらに具体的に課題解決に向けて動き出すことができているということです。
(公財)みらいファンド沖縄 小阪亘さん、平良斗星さんの発表資料はこちら
「沖縄式地域円卓会議開催マニュアル」はこちら

グループディスカッションの様子

雲南市、沖縄からの事例を聞いたあとは、各グループに分かれ椅子を円に並べ、それぞれのスピーカーを囲んでグループディスカッションを行いました。セミナーに参加した各地行政の方、NPOの方から、自分の地域で円卓会議を行う際にすぐ活用できそうな具体的な質疑応答がたくさん出たようでした。

最後に、本セミナーの進行を務めたIIHOE(NNネット幹事団体)の川北さんから、「地域円卓会議をどう立ちあげたらいいか?という質問をよく受けますが、まずは始めて続けてみてください。多少の失敗があっても実績は積み上がっていきます!」と参加者の皆さんを励まされました。

NNネットでは今後も地域円卓会議に関するセミナーを開催していきます。次回はぜひ皆さんの地域の事例をご報告いただければと思います!各地での地域円卓会議のご報告は随時お寄せいただければ幸いです。