(2014/10/17)ISO26000策定に関わってきたカロリン・シュミット氏をお迎えしてセミナーを行いました

2014年10月17日、日本NPOセンター会議室(東京都千代田区)にて「ISO26000発行記念SRセミナー2014 ―策定に関わってきたカロリン・シュミット氏をお迎えして」を開催しました。当日の様子をご報告します。

国際的な動向の最新報告

NPOや企業から、約20名ほどの方がご参加くださいました。

米国の環境NGO「Ecologia(エコロジア)」のプログラム・ディレクターとしてISO26000の策定に初期から関わり、発行後の現在もISO26000フォローアップ組織のステークホルダーアドバイザリーグループに参加していらっしゃるシュミットさん。今回のセミナーでは、開催直前にインドネシアのバリ島で行われた国際オープンフォーラムの報告とともに、ISO26000におけるNGOの役割について、またISO26000に関連したビジネスとモラルの共存についてお話しいただきました。

インドネシアでの国際会議について報告するカロリン・シュミットさん。スライドの写真右端はNNネット代表としてこの会議に参加したCSOネットワークの黒田かをりさん

シュミットさんは、2014年10月7日から10日にかけてインドネシアで行われた国際オープンフォーラムに参加されました。このフォーラムはISO26000フォローアップ組織でシュミットさんとともに活動するノーマン・スハルマン氏と、インドネシアの企業連合であるC.F.C.D(Corporate Forum for Community Development)の呼び掛けで開催が実現したものです。インドネシアの国営企業、インドネシアに拠点を置く海外企業の他、NGOなどが参加し、ISO26000を活用するためのツールや、ISO26000再検討プロセスにおけるステークホルダーエンゲージメント、新たにISO規格の作成が検討されている「持続可能な調達」に関する最新動向などについて話し合われました。発展が進むインドネシアではコミュニティ開発と企業活動が対立することもありますが、シュミットさんは、「今回のフォーラムに参加したインドネシア企業の方々はCSRを『企業の責任として当然取り組むべきもの』ととらえ、誠意を持って取り組んでいた」と評価されました。

インドネシアでのフォーラムでは、「日本のNGOは(ISO26000に関して)アドボカシーが弱い」という指摘もあったということで、NGOの役割についてもあらためてご説明いただきました。NGOには、企業とコミュニティの間をとりもつステークホルダーとしての役割や、企業のCSRの支援先としてのプロジェクトの実施団体としての役割、そしてNNネットのようなネットワークを組織する役割があります。シュミットさんは、ISO26000の見直しおよびフォローアップのプロセスにおいてもNGOの役割は非常に重要であると述べられました。

最後に、「ビジネスとモラルの共存」についてもお話しいただきました。この2つは特に利益を求める企業にとってはときに対立するものとしてとらえられがちです。しかし、地球資源の消費が急速に進む今日、たとえ最大限の利益を生むことができなくても、持続可能性のある、社会的な企業活動が求められています。シュミットさんは企業のみにその責任を負わせるのではなく、CSRをサポートするために政府が法整備を進めたり、消費者が社会的責任を果たしているサービスを選択して購入・活用することも求められていると述べ、ISO26000の見直しやフォローアッププロセスだけでなく、実現においてもセクターを超えた協力が求められていることを強調されました。

また、エコロジア発行のISO26000実践に関するハンドブックもご紹介いただきました。当日の発表資料とハンドブックは以下からダウンロードいただけます。

カロリン・シュミット氏発表資料(英文)

ISO26000 after 4 years: The Business Case and/or The Moral Case

ISO26000に関するハンドブック(英文)

“Handbook for Implementers for ISO26000, Global Guidance Standard on Social Reponsibility,” Designed by ECOLOGIA for Small and Medium Sized Businesses (May 2011)

日本のNPOでのISO26000の実践事例を紹介

続いて、日本のNPOであるAAR Japan[難民を助ける会]NPOサポートセンターから、それぞれ自組織でのISO26000への取り組みが紹介されました。両団体ともNNネットの幹事団体を務めており、ISO26000の中核主題に沿って団体が優先して取り組むべき課題を選定し、取り組みを進めています。

AAR Japan[難民を助ける会]の取り組み
NPOサポートセンターの取り組み

自団体の取り組みについてお話しくださったNPOサポートセンターの小堀悠さん(左)とAAR Japan[難民を助ける会]の岡田正幸さん(右)

「ISO26000の使いやすいところ、使いづらいところも使ってみないと実感できません。まずは活用してみて」と話すシュミットさん

シュミットさんは「色々な国のケースを調べているが、NPO/NGOセクターの取り組みについて直接聞いたのは初めて」と喜び、「自団体の改善のためにISO26000が役に立っていると実感してくれてうれしい」と述べられました。実際に活用を進めてみて、AAR、NPOサポートセンターとも「網羅している課題が非常に幅広い点が使いやすくもあり、使いづらくもある」と感じていることに対して、シュミットさんは「自団体が取り組むべき課題について、取捨選択をしながらこれからも活用してほしい」と答えていました。

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。NNネットでは今後もセミナーや勉強会を行っていく予定です。引き続きウェブサイトなどで情報をご確認ください。