<開催報告>SRフォーラム 2023「あと7年、SDGsへの取り組みをどう進めるか?」
2023年5月23日(火)、SRフォーラム2023「あと7年、SDGsへの取り組みをどう進めるか?」を地球環境パートナーシッププラザとオンラインのハイブリッド形式で開催し、約15名の皆さまにご参加いただきました。
SDGsの知名度は上がってきたが達成までには課題が多い中、世界全体と地域でどのように進めていくのか、議論しました。
〇「世界はいまや『ポリクライシス』:7年後に『持続可能』のパラダイムにたどり着くために」/稲場雅紀氏((特)アフリカ日本協議会)
SDGs期限までの折り返し地点に到達したが、世界が持続可能なものになっていると実感している人は少ないのではないか。気候変動や生物多様性・パンデミックへの備えは十分ではなく、外務省予算は「国家間競争を勝ち抜く」ことを一番に標榜する予算となり、科学技術は無秩序に社会に投入されている。デジタル空間でも誤情報や情報のごく一部を切り取ったものが当然のように出回る危機的状況。このようなポリクライシスにより、SDGs達成への取り組みは結果に結びついておらず、SDGsなどやっても意味がない、という不信感につながっている。
また、SDGsは「企業や個人のやる“ちょっと良いこと”」の総称として理解され、政府が最終責任を持つことが理解されていないことから、公共政策・立法の面に注目が集まらない。その結果、規制の対象にもならず、個人や企業単体での取り組みで構わないという理解が定着してしまっている。
今後に向け、今年9月のSDGsサミットは非常に重要な位置づけとなる。さらに2030年以降を見据えた布石を作る必要がある。ウクライナ危機にみられるような世界の分断と「国家間競争」から、地球規模課題に世界全体で立ち向かうトレンドを取り戻さなければならない。
〇「SDGsをテコにした当事者による政策提言や民間協業の加速~2030年の先を見た地域づくりのために~」/石原達也氏((特)岡山NPOセンター、SDGsネットワークおかやま)
SDGsの達成には、人々の考えや暮らし方が変わらないと難しい。「暮らし」と「商売・事業」は相互関係にあり、それぞれが変化する、つまり価値転換が必要である。NPOは課題解決(対処)には強いが価値転換には弱い。この間は特に課題解決に終始してきた。今後は価値転換を進めるために、個々の意識転換。動く個人を増やす支援が必要である。
そのためにも社会事を自分事と捉える人をいかに増やすかが重要。自分事への変化として岡山では、災害の経験(災害支援ネットワークおかやまの設立)、コロナ禍のでの飲食店による合同ガイドライン作り、子どもの貧困等に対する地元新聞社との協働による基金設置と発信、コミュニティフリッジ(食料品や日用品の寄付による助け合い)の開所などの機会が重なって参加する層が増えてきたことを実感している。
また最近では、当事者である高校生が生理用品の設置を学校に求める運動を支援し、県議・市議、行政、NPOと対話する場づくりや、保護者が行うイベント支援、当事者による運動支援に力を入れている。当事者意識をもってまちづくりに取り組む人や組織をいかに増やしていくか、消費者から当事者に変えていくことが、真の意味でのSDGsの達成に必須である。
〇「多様な主体や世代の協働で取り組むSDGsとその先の難しさ」/松原裕樹氏(NNネット幹事、(特)ひろしまNPOセンター)
多様な主体が相談しやすい環境を整えるため、自治体におけるSDGs相談窓口の明確化を行った。先日終了したG7サミットのような機会にいかに地域の声を挙げていくか、市民サミットを開催・活用するか。今回の首脳宣言に対する市民社会の評価は低かった。具体的ではなく、そのプロセスにも疑問が上がった。SDGsに踏み込むには、具体的な目標・指標がなければ進まない。現実的に、2030年までに達成ことが難しい部分が想定されるため、その後を見据えた打ち手の必要性を感じている。単一の分野に限らず、複合的な取り組みをする際の中間支援機能への理解や強化が必要である。
続いて、ファシリテーターである川北秀人氏(NNネット幹事、IIHOE(人と組織と地球のための国際研究所)代表者)の投げかけから、残り7年をどう進めるか、について議論されました。
◇日本人の国際協力への意識の減退が進む中、政府は地球規模課題による日本への影響を国民に伝え、整合性のある政策を作り、市民社会は関心をもたなければならない。(稲場)
◇人権分野はデマゴギーで政策から排除され続け、市民社会の努力とは別に、目に見える成果が出ない状況。その結果、「社会的インパクト」のような考え方からすれば、「インパクトが出ていない」という話になり、資金や労力の投入も減る、という負のスパイラルが起こっている。人権問題がデマゴギーによって政治的な問題にさせられていることが原因であり、政治的な相対化を避けるためにも、非常に困難ではあるが、数値化が必要。(稲場)
◇市民社会の発言力を強くするためには、暮らし側から変えていく必要がある。教育現場との連携は企業にも影響を与えることができる。行政や大手企業へアプローチをすべきか、個人の行動を支えるべきか、悩みではあるが、両方必要なことであろう。(石原)
◇定性的に海外と比較することで、日本にはない視点に気づくことができる。近隣県との比較も効果的ではないか。(松原)
◇災害時の避難所の在り方など、対応の改善をデジタル技術を活用しながら取り組む必要性を感じている。(石原)
◇行政を批判することで行政の担い手が育たなくなるという問題がある。反対派の声の上げ方や、スポットライトの当て方にも考慮が必要である。(松原)
参加者の皆さんからは、過疎化の問題への取り組みにどう立ち向かうか、G7を機に行われた「SGDs折り鶴プロジェクト」のような市民が参加する機会の提供が必要だと感じている、各セクターが複合的に課題を捉えなおす必要性を認識した、他人のことを自分事として受け入れていかなければ、などのご意見・ご感想をいただきました。