連続SRセミナー2016 第1回「持続可能な開発目標(SDGs)」開催報告
2016年度の連続SRセミナー第1回目は、「持続可能な開発目標(SDGs)」をテーマに開催しました(7月19日開催)。
登壇者は、堀江 由美子さん(公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)と、星野 智子さん(一般社団法人 環境パートナーシップ会議)です。
1.SDGs策定の経緯
2015年9月25日に、国連総会特別サミットにて、持続可能な開発目標(SDGs)を含む「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。
SDGsがクローズアップされますが、2030アジェンダの一部として、具体的な目標が提示されている部分がSDGsです。採択の際には、日本からも政府、市民(NPO/NGO)、企業、研究者などが参加し、共同記者会見なども開かれました。
SDGsは、途上国の貧困問題解決を目標とした「ミレニアム開発目標(MDGs)」の流れと、気候変動・生物多様性などの環境問題をテーマとした持続可能な開発実現の行動計画「アジェンダ21」の流れの両方が組み合わされ、誕生しました。
2.SDGsの特徴
SDGsでは、「誰も置き去りにしない」をキーワードに、「貧困をなくす」、「ジェンダー平等の実現」、「気候変動の対策」、「平和と公正」など17の目標と169ターゲットが設定されています。これらの目標は、途上国だけが対象ではなく、先進国を含めた世界全体が対象となっています。日本においても、国内各地における問題も取り組みの対象となっています。
また、持続可能な社会に求められる要素として、5つのP「人(People)」、「地球(Planet)」、「繁栄(Prosperity)」、「平和(Peace)」、「パートナーシップ(Partnership)」が示されています。
一方で、SDGsは国際条約ではないので、強制力はありません。様々な主体が積極的に目標達成に向けて取り組んでいくことが求められています。
国内では、2012年から「ポスト2015に関する外務省NGO意見交換会」が継続開催されるとともに、NGOを中心とした70団体以上が参加するネットワーク組織「動く → 動かす」が立ち上がるなどし、検討が進められてきました。
3.実現に向けた取り組み
(1)政府の取組み
日本政府は、伊勢志摩サミットの直前の2016年5月20日に、首相を本部長とするSDGs推進本部を設立し、「SDGs実施指針」策定について発表しました。今後も、地方創生や一億総活躍社会など、様々な政策との連携も期待されます。
(2)国内・地域における取り組み
日本国内では、地球規模の課題と国内課題の両方に、それぞれのつながりを意識しながら取り組むことがポイントになってきます。関連する様々な政策との調整・融合を図りながら、地域にも広がっていきます。
国内課題の例としては、6人に1人が貧困状態といわれる「子どもの貧困」などが挙げられます。子ども食堂の取組みなども注目されています。
「貧困問題」のSDGsにおける目標は、次の2つです。
【目標1】あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる。
【ターゲット1.2】2030年までに、貧困状態にある全ての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。
例:日本国内の子どもの貧困率: 16.3% → 8% に半減させる。
【目標10】各国内および各国間の不平等を是正する
【ターゲット10.1】2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続する。
(3)NPO/NGOの取り組み
2016年4月に、SDGs市民社会ネットワークが設立され、伊勢志摩サミットでも発信をおこないました。今後、政府・自治体・企業・研究者・労働組合・消費者団体などの様々なステークホルダーとの対話機会の提供、より幅広い市民からのインプットおよびモニタリング、実質的な実行プロセスへの関わりなどが期待されています。
(4)企業に期待される役割
企業に求められることは、まず参画すること。その上で、ビジネスチャンスとして捉えるだけでなく、事業活動による負の影響を最小化し、正の影響を最大化することが求められます。SDGsを企業戦略に活用するツールとして、「SDGコンパス(SDGsの企業行動指針)」なども提供されています。
4.今後に向けて
SDGsの取り組みが本格化していく中で、詳細なデータ収集、予算確保、成果のレビュー方法の確立など、まだまだ課題も多い。成果を測るためのグローバル指標の検討も引き続き実施されている状況です。
実現のためのコストを確保するためには、野心的な目標、行動が必要であると同時に、行政・企業・市民・研究者などの多様なアクターによる目標共有や実現体制の確立が国家レベル、地域レベルそれぞれで鍵となります。
SDGsは、目の離せない重要なキーワードになることでしょう。
社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク(NNネット)では、以下のテーマで今後のSR連続セミナーを開催します。お申込みをお待ちしております。
第2回 「メガスポーツイベントと持続可能性調達」
日時:2016年9月20日(火)18:00~20:00(開場17:45)
第3回 「ビジネスと人権に関する指導原則」
日時:2016年12月20日(火)18:00~20:00(開場17:45)
第4回 「持続可能な調達」規格-ISO20400
日時:2017年2月21日(火)18:00~20:00(開場17:45)
- 会 場(共通):地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)(1F)
(〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-70 国連大学ビル1F) - 参加費(各回):2,500円 / NNネット会員:500円