SRフォーラムin “関西”(2014.6.16)開催報告

2014年6月16日に、「社会的責任(SR)に関する事例を学び、信頼される団体運営を高めよう!」をテーマに、SRフォーラム in関西が開催されました。今回は、関西のNNネット会員の方やNPO/NGOの方に参加して頂きやすいように、大阪市にて開催いたしました。

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1部は事例紹介として三つの団体に発表していただきました。

 

【事例1】学生ボランティア950人と一緒につくるNPOのマネジメントとガバナンス

能島裕介さん(特定非営利活動法人ブレーンヒューマニティー 理事長)

ブレーンヒューマニティーは950名の大学生ボランティアが中心となって組織を運営しています。現場の運営だけでなく、組織の経営も学生が担っているため、この体制で健全な組織経営をするために多くの工夫を積み上げてきました。内規で理事の過半数を学生とすることが決まっているため、理事10名のうち6名が学生です。毎週木曜日の19時からは学生理事による定例役員会を開催し、この役員会によって、人事案件、事業関連、管理関連について審議し、議決していきます。

しかし、4年でほとんどの構成員が入れ替わるということが組織の大きな特徴であるため、経験、知識、スキルの蓄積が大きな課題でした。その解決策として、プレーンヒューマニティでは徹底した文書化と記録をしています。すべての会議に議事録が作成されることで、誰もが閲覧可能な状態になり情報共有を促します。また、事故や問題が発生した場合は、詳細な報告書を作成し、同じことが起こらないよう危機管理にも備えています。学生によるガバナンスとマネジメントを実現するため、明確なルールを設定し、徹底した議論とプロセスの公開、責任と権限の明文化を行ってきました。このような運営を行っていくことは簡単なことではありませんが、学生を育てることは社会の大きなミッションだと認識しています。

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【事例2】団体内で進めるISO26000の取組みについて

堀江良彰さん(特定非営利活動法人AAR難民を助ける会 専務理事・事務局長)

 

AAR難民を助ける会は国内約60名、海外約200名以上という大きな組織です。組織としてISO26000に取り組むために、2013年度はISO26000推進委員会を組織しました。「難しく考えず」「とにかく着手」「2013年度のPDCA1周目をとりあえず回してみよう」を合言葉に取組みをスタートしました。推進委員会のメンバーは、7つの中核主題に関連の深い業務の担当者6名で構成。月1回のミーティングを行い、7つの中核課題に関連する対策として、「苦情処理窓口の拡充」「お問い合わせボタンを目立たせる」などの取り組みを前進させました。

現在取組み中の課題は「文書管理規定の制定(ASC2012指摘課題)」「職員応募書類・面接の見直し」「時間外労働の見直し」です。この活動を通して組織としての気づきが三つありました。まず「ルールの決め方のルールがない」ということ。解決策として、AAR難民を助ける会では簡単に決められるルールと、公式なルール制定過程によって決めるものとに分けることにしました。そして「取り組み状況が定量化できない」ということです。この課題には、年に1度「重要性と要・現実性のマトリクス」をつかって評価することにしました。三つ目は「ISO26000に対する関心が組織内で温度差がある」ことです。打開策として現在は月例全体会議で進捗状況を報告しており、今後は会内会報の活用も検討しています。推進委員会の担当者にはなるべく負担感のないよう、通常業務の一環として取り組んでいます。すべてを実施することはできないので、強制ではなくやりたいところや納得のあることから実施していく取り組みが大事だと思っています。

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【事例3】NPOの情報開示からSRにとりくむ

志場久起さん(特定非営利活動法人わかやまNPOセンター 専務理事)

いまやNPOの経済規模は1兆円に迫ると言われています。和歌山県内のNPO法人の総収入は約41億円にもなり、これは県内の古座川町(人口約3,400人)の一般歳入額に匹敵します。このようにもはやNPO法人は経済主体として無視できない存在となっていますが、地域の中には「NPOって儲けたらあかんの違うの?」という声もあり、誤解やクレームも多く、まだまだ正しい理解が進んでいないのが現状です。

地域に受け入れられるにはNPO自身の能動的な情報発信が重要です。和歌山県のウェブサイト内のNPO法人リストは最低限の情報しか掲載されていないため、これでは能動的な情報発信には向かないと思い、日本財団公益ポータルプロジェクトと連携し、情報発信サイト「わかば」を作成しました。このサイトを通じて発信される内容は助成財団の質問項目も意識されており、助成金・補助金獲得講座などで活用をアピールしています。また外部からの問い合わせの際には、この「わかば」や和歌山県NPOホームページの「わかやまNPO広場」を紹介しています。取り組みの課題は、情報入力を各団体の自主性にゆだねており、ITが不得意なNPOには敷居の高いものとなっていることです。

今後、マルチステークホルダープロセスを進展させていくためにも、「和歌山県にどんなNPOがあるのかわからない」という疑問を解消していくことが大事だと思っています。NPO会計基準基準を推進すること、NPO自身の情報発信力を強化することで「義務的情報発信」から「能動的情報発信」へ変化させたいと思っています。せっかくの“いい”NPOの活動を活かすために、中間支援としてNPOの情報開示をこれからも進めていきます。

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2部はSRカフェを開催し、グループに分かれて、各団体の取組みや課題について、登壇者も一緒になって語り合いました。グループ毎のまとめでは、以下のような意見が出ました。

・事業をまわすことと組織をまわすことの両方の視点が必要。

・労働基準監督署がNPOに立ち入るケースが出てきたことで、労働時間、残業時間について、NPOもきちんと議論することが必要になってきたのではないか。

・残業時間管理等については、リスクで考えるのではなく、志としての働き方も大切。NPOらしさのある働き方とはどういうものか議論の必要があるのではないか。

・人事評価はどのようにしたらいいのか…企業の人事評価の方法を知りたい。

・情報発信は成功体験を仲間で共有するとうまくいくケースもある。

・ISO26000のコミュニティ参画の視点で考えると、地域の資源である学生、若者を大切にすることはすなわち地域に参画することにもつながるということだと思う。

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大阪にて初めて開催されたSRフォーラムは、活発なディスカッションで幕を閉じました。

ご参加頂きましたみなさま、ご来場ありがとうございました。

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