ISO26000発行3周年記念「SRセミナー」を行いました(キーノートスピーチ~パネル ディスカッション)
NNネットでは、11月1日(金)、東京・表参道にて、ISO26000発行3周年記念セミナー「社会的責任(SR)普及の現在地~発行から3年を振り返る~」を開催しました。
29名のご参加をいただき、盛況のうちに終了いたしました。キーノートスピーチ、パネルディスカッション、ポスターセッション、交流会の報告を掲載します。
キーノートスピーチ
「Can you make a change? -ISO26000発行3周年、その意義と課題」
キーノートスピーチでは、日本ILO協議会 編集企画委員であり、前ISO26000起草委員の熊谷謙一氏より、日本や世界でのISO26000の普及・活用状況と今後の課題・展望についてご報告いただきました。
熊谷氏は冒頭、ISO26000は、NPO/NGOが初めて本格的に参画してつくられたという点で意義深いとし、テーマである「Can you make a change?」は、策定開始時の市民社会側からの発言であると説明されました。
以下、熊谷氏のお話です。
ISO26000は、持続可能な社会の実現には、ハードローだけでなくソフトローも必要だという認識の下に作られました。その本質は、持続可能な社会を目指した国際的なコンセンサスを、市民社会などのステークホルダーの力によって、企業等の組織の日常に活かすということです。
発行から3年経ち、国内規格として承認されている国は、日本のJIS(JIS Z 26000)を含み64カ国に達し、企業、労組、大学等で様々な取り組みがなされています。日本では特に企業のCSR報告書での活用が進み、何らかの利用をしている企業は2013年度で30%にものぼっています。
では、ISO26000は何を変えたのでしょう。ISO26000はそれまでばらばらだったCSRの定義を示しました。そして共有できるコンテンツ(7つの課題)を示し、ステークホルダーの参画を組み込み、同時にデューデリジェンス(予防的リスク管理)を動かしました。
今後は、国内の企業、組織、地域の現場に広げていくことと、ステークホルダーの参画をすすめることが課題になるでしょう。その際、市民組織は、ステークホルダーとして力を発揮することが大切です。ステークホルダー参画による、国際CSRの展開と公正な社会の実現を目指していくことがISO26000の3年目のお誕生日にあたって重要なことなのではないかと思っています。
最後に、海外企業、国内・海外の労組によるISO26000に関する注目すべき取り組み事例のご紹介をいただき、熊谷氏のご報告は終了となりました。
パネルディスカッション「SRの普及と取り組み」
パネルディスカッションでは、一般財団法人CSOネットワーク 事務局長 黒田かをり氏の進行のもと、株式会社伊藤園 取締役・CSR推進部長の笹谷秀光氏、国分寺市選挙管理委員会 事務局長の富澤守氏から、SR普及に関する取り組み事例についてご報告をいただき、その後、キーノートスピーチをされた熊谷謙一氏も交え議論をおこないました。フロアからの質問もいただきなごやかで活発な意見交換がおこなわれました。
笹谷氏は、「伊藤園の共有価値の創造 パートナーシップの時代-トリプルSのCSR」と題し、伊藤園のCSRの取り組みを、ISO26000に裏打ちされたCSRと、今話題のCSV(共有価値の創造)及び ESD(持続発展教育)の理念を包括したものであると説明されました。ISO26000をCSRの定義を定めたものとし、持続可能性を「世のため、人のため、自分のため、子孫のため」と翻訳されました。CSVの取り組みとしては、茶がらリサイクルシステムやお茶っ子会の活動を進めているとのこと。ステークホルダーエンゲージメントには、地理的広がり、時間的広がり、情報的広がりが必要であると指摘されました。
富澤守氏は冒頭、国分寺市の公共調達条例第一章第一条「この条例は、(中略)実施主体である市と調達の担い手である事業者がともに社会的責任を自覚し、もって市政及び地域社会の発展に寄与することを目的とする。」を読み上げ、この条例を作った立場から報告をされました。情報公開条例などもその例だが、国に先立ち自治体が率先している制度があると説明。ISOは任意のガイダンスなので、国の法律がしっかりできていないと難しい部分もあるが、自治体、市民社会、企業がいっしょになって進めていくことが重要とされました。
その後、フロアからの質問「組織の社会的責任だけではなく、政府や個人が社会的責任を果たす必要があるのではないか」については、個人の社会的責任を形にするにはコーディネート力が必要とのお答えが、「障害者雇用とISO26000」についてのご質問については、障害者雇用に関する法律はたくさんあるが現実への適用には問題があり、現実の体制整備とともに、人々の意識を変えるという意味で、ハードローとソフトローを組み合わせて取り組む必要があるとのお答えがありました。今後、組織の社会的責任に関する取り組みを広めて行く際には個人の社会的責任についても目を向けて行く必要があると感じました。
(報告:CSOネットワーク 長谷川 雅子)
ポスターセッション~交流会の報告はこちらでご覧いただけます。