NGOとSR ~取り組む意義の実感は成功体験の積み重ねから~(JANIC 松尾沢子)

NGOとSR ~取り組む意義の実感は成功体験の積み重ねから~

松尾沢子(特定非営利活動法人国際協力NGOセンター 広報グループマネージャー)

日本には、国境を問わず、貧困、飢餓、格差、環境破壊、人権侵害などの様々な地球規模課題に取り組むNGO(市民組織)は400から500団体ほどあるといわれています。私のいる(特活)国際協力NGOセンター(JANIC)はNGOによる日本で最も大きなネットワークです。

1987年の設立以来、JANICが常に考え取り組んできたことに、私たちNGOセクターと社会との関係性があります。NGOは市民社会を構成する様々な組織と共に課題解決に取り組むことを前提としています。そのために自分たちの理念、目的、活動内容とその結果を積極的に公開することや、社会通念や法令に基づく民主的で開かれた運営をすること、すなわち社会に対して説明責任(アカウンタビリティ)を果たすことは欠かせないことと認識してきました。時には、一部のNGOによる公的資金の不正使用という望ましくない事態を反面教師としながら、セクターとしてこのテーマと向いあってきました。

アカウンタビリティの意味は理解できても、その実践には手間やコストがかかり容易ではありません。活動にかかわる個人・組織の間でのアカウンタビリティに対する理解や重要性の認識に違いがあることもあります。実践には、理解から一歩進んで「意義の実感」が必要ではないか、そのためには成功体験の積み重ねが効果的ではないか、とJANICでは考えてツールづくりをしてきました。

自団体のアカウンタビリティの状態を自己診断できる「アカウンタビリティ・セルフチェック(ASC)」の仕組み(http://www.janic.org/more/accountability/)は、いわば団体の健康診断。一定の視点でチェックすることで、自らが健全な組織運営のためにすることを確認できます。昨年公開した「NGO総務の知恵」(http://www.janic.org/activ/ngoability/somuchie-member/)は、組織運営に役立つ情報を提供するサイトで、例えばルール化されている労務管理に必要な文書のサンプルをダウンロードできます。これらのツールを通じ、個々のNGOが取り組んだ結果や気付いたことこそが大なり小なりの「成功体験」となり、取り組む「意義」を実感することにつながっています。

2010年発効のISO26000には、組織にとっての「SR(社会的責任)」とは、アカウンタビリティのみならず、労働慣行、人権、環境、公正な事業活動、社会開発、消費者課題などの領域が含まれています。従来日本のNGOが議論し、取り組んできたアカウンタビリティに加え、支援方針や活動の場面でもSRを考える時代となりました。例えば、支援先の住民やコミュニティの有する権利を理解し、それらを尊重しながら活動を進めていくこと。アカウンタビリティと同様、当たり前のことのようですが、実は支援する側が現場で見落としがちです。

私たちと社会との関係性、特に高まる期待や責任に応えていくために、アカウンタビリティを超えたSRに向き合う時期がきています。今まで以上にマルチステークホルダーアプローチを意識しつつ取組み、支援先を含む関係者の方々と成功体験を積み重ね、SRが当たり前の社会を目指したいと考えています。

【参考資料】
○「アカウンタビリティ・セルフチェック(ASC)」の仕組み(JANICのWebサイト):
 http://www.janic.org/more/accountability/
○「NGO総務の知恵」(JANICのWebサイト):
 http://www.janic.org/activ/ngoability/somuchie-member/