復興とSR〜試される日本のマルチステークホルダープロセス〜 (DECO 田村太郎)

復興とSR 〜試される日本のマルチステークホルダープロセス〜

田村太郎(一般財団法人ダイバーシティ研究所代表理事)

2010年11月のISO26000発効から半年も経ずに東日本大震災が発生しました。未曾有の大災害に私たちは立場を越えて、様々な支援活動を展開しました。震災から2年以上が過ぎましたが、復興はこれからが本番です。これまで以上に多様な担い手が連携して復興にあたることが求められるところです。

しかし、時が経つと様々な場面で「震災前の秩序」へと回帰しつつある状況が見受けられます。「そもそも行政の責任で対応すべきだ」「NPOは説明責任を果たせていない」「企業はもっと復興に責任を果たすべきだ」といったように、互いの責任を責め合うような言動を被災地の内外で耳にします。これでは復興は加速しません。

日本の市民活動や企業の社会貢献活動、行政と他のステークホルダーとの連携の大きな転換点となった阪神・淡路大震災でも、直後の混乱へのステークホルダーの壁を越えた連携により、多くの困難を乗り越えられた反面、時間の経過とともにステークホルダー間の連携は総じて薄れていきました。しかし、復興は合意形成の連続です。ステークホルダーの壁を越え、地域の未来にともに責任を分かち合おうという機運が高まった地域では、現在でも「取り戻した自分たちのまち」への誇りが感じられます。

岩手県山田町で起きた、行政の委託を受けたNPO法人による残念な事件により、NPOはいい加減だというレッテルが貼られていると聞きます。震災直後から私が見聞する情報では、この事件はNPOの問題というものではありません。地域の課題に対して、誰がどのようなプロセスで課題に向き合い、誰が責任を共有しながら課題の解決にあたるのか、という本質的な議論を抜きにして、NPOが起こした事件というおおざっぱなくくりで議論しても意味がありません。

同じ文脈で、「復興が遅れているのは行政が悪い」という批判も私は好きではありません。特定のステークホルダーをひとくくりにして批判するのではなく、地域の未来に責任を共有しようとする担い手が連携するテーブルを設けて復興を前進させることが重要です。

これだけ多くの犠牲を払った災害です。新しい社会を築こうとする機運をもう一度高めなければなりません。東北の復興を機に、マルチステークホルダープロセスによる社会責任の共有というISO26000の精神を生かしたまちづくりが展開されることを期待しています。