【開催報告】SRセミナー2018 第3回  非営利セクターのガバナンスを考える

社会全体で「ガバナンス」の重要性への認識が高まる中、社会の課題解決や理想実現に挑む非営利セクターにこそ、社会の信頼を得るための取り組みの必要性が高まっています。しかし、そのための具体的な施策を積み重ねている団体はわずかにとどまっています。

本セミナーでは、早くからNPO/NGOのガバナンスの重要性に着目し、全国で「理事・理事会を活かす・育てる」研修を行なっている、NNネットの幹事団体であり、NPOの社会責任(SR)取り組み推進プロジェクトを主宰する、IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表者の川北秀人さんより、NPO/NGOの理事・理事会の役割の再確認や改革の進め方、そして計画中のNPO/NGOガバナンス向上プロジェクトについてもお話をいただきました。

講義の後は、グループに分かれてそれぞれの団体の実情を共有する形で意見交換をおこない、全体共有、質疑応答に進みました。日頃から課題を感じながらも、正面から取り上げられることの少ない理事会やガバナンスに関する議論に、多くの皆さんが刺激を受けたようで、活発な議論が交わされました。
 
挨拶
小堀悠さん(NPOサポートセンター事務局長)

本日は、自団体のガバナンスについて考えたい方と、中間支援的な立場で参考にしたい方の両方の方々がご参加くださっている。
 
問題提起および講義
「社会課題に挑む非営利・公益組織のガバナンス—理事・理事会、監事の在り方を再確認する」
川北秀人さん(IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所] 代表者/NPOの社会責任(SR)取り組み推進プロジェクト/NNネット)
 
・NNネットは全ての組織のSRを推進していこうという理念の下で発足した。

・NPOの抱えている課題のひとつは活動にあるが、組織基盤に関するものも大きい。中でも理事・理事会に着目し、94年に活動を始めた当初から、理事、事務局長の評価や育成などを支援してきた。

・企業や財団などお金の出し手は増えているが、組織基盤への助成はまだ少なく、団体も組織基盤強化には手がまわっていない。

・1999年にボードソース(当時の全米NPO理事センター:NCNB)にインタビューに行った。米国でも70~80年代以降、NPOでスキャンダルが多発したことを受けて、NPOが自らを律するためにNCNBが設立された。理事の教育や支援ができていないことが問題の背景にあるという認識からだ。

・「NPO理事の10の基本的責任」(Ten Basic Responsibilities of Nonprofit Boards、NCNB刊)の日本語版をIIHOEが刊行した際に、同会のCEOにインタビューした際、NPOの理事の最も重要な役割は「戦略的な考え方、ポジショニングだ」と述べられた。5~10年後を真剣に予測しているか。「目的」こそ組織と理事会の存在意義だ。

・NCNBは他にも理事会の自己評価や事務局長の評価等に関する冊子を相次いで発行し、各国で翻訳されている。理事会の自己評価は90項目以上。IIHOEでも過去に5冊翻訳したが、日本の文脈も踏まえ、ルーブリックを取り入れるなどの工夫が求められることから、「NPOマネジメント」で特集を組むなどしてきた。

・昨年秋の自民党のスポーツ議連による「スポーツ団体のガバナンスコードをつくるべき」との発言から始まった一連の流れは、規制や監督の枠組みを新たに儲けようとするものであり、問題が大きい。スポーツは、自分たちが作ったルールを自分たちで守ることが原点であることを忘れてはならなない。

・特定非営利活動促進法から20年、公益法人制度の改革から10年を経て、日本の非営利組織のガバナンスを立て直す必要を痛感している。企業のSR(CSR)、行政のSR(GSR/LGSR)も大事だが、一方でそれらに働きかけるNPOが自らのガバナンスを正す必要がある。法令順守を超えた、ポジティブな原則やモデルが必要だ。
 
・1998年以降、理事会向け研修を、年間100人以上に行ない続けている。

・翻訳の1つである「NPO理事の10の基本的責任」や上述の「NPOマネジメント」の特集で紹介したアセスメントツールなどを活用。

・目標、ミッション、戦略と管理系業務、理事会やスタッフとのパートナーシップ等が、どの段階にあるかを自ら把握し、目標を設定し、評価して改善するサイクルが必要。
 
・しかし、私たちの力不足ゆえ、大きな流れ・動きをつくり出せていない。今後は、日本におけるNPOのガバナンスの実態把握からスタートしたい。

・法人格によって法制度が異なるので、共通のテキストがつくりづらい。また、理事人数や理事会開催回数などの「相場感」もよくわからない。公的な統計調査の項目に導入してほしいが、その前提となる調査を実施したい。

・特定非営利活動法人の実態調査でもガバナンスについての設問は入っていない。理事会の規模や開催頻度に正解はないが、実態に基づく標準値があると良い。
 
・理事会に関する調査の主な項目としては、開催回数、会議時間、議事項目、機能(担当や委員会などの設置)、判断の共有(スタッフへのフィードバック)。

・評議員会の調査項目としては、人数、会議の回数、議事項目(理事の選任など)。

・監事の調査項目としては、監査項目(会計、業務)、今後は労務監査も重要。
 
・「NPOマネジメント」の特集「理事・理事会を活かす・育てる15のポイント」では、下記の点などについて述べた。

・理事の基本的役割は、判断と応援と働きかけの3つ。その役割にふさわしい人を選んでいるか。

・年間合計何時間で何を決めるか、議題のスケジュールを明示するだけで問題の大半が解決する。

・役割を絞る。日本の理事会は報告しすぎ。最重要テーマだけに絞り、その検討・判断を掘り下げてもらう方法も。

・委員会や部会制の導入。全体で議論する必要がなければ、効率性を考える。同様に担当理事制も。全体共有がない代わりに月次の業務報告会議の陪席権または要約を共有する。現場との交流の機会の提供。

・理事会のコンパクト化も一つの考え方。

・理事会育成担当理事を置く。前回欠席理事のために会議前にレクをする。理事の候補を探すなど、ゴーイングコンサーンで進化させていく。

・外部理事の役割はしっかりと質問すること。大きなことを見る、次に備えておくべきことを指摘する。

 

〇ワーク

以下の3項目を書き、グループに分かれてディスカッション。その後グループ毎に発表。

  1. 感じたこと・心に残ったこと
  2. 自団体のガバナンスですぐ改善したいこと
  3. 質問・ヒントがほしいこと

 

・現場と理事の交流は必要。事務局長評価は是非実施したい。理事の役割が「判断・応援・働きかけ」というまとめは腑に落ちた。

・監事が管理監督できていない。理事長にカリスマ性があると理事会が機能しなくなる。現場スタッフと理事会との交流は大事。

・理事会リバイバル計画の中の議題のスケジュール明示はすぐにでも行ないたい。組織目的の再明確化は必要。理事と事務局の兼務者が多く線引きが曖昧になっている。経営拡大に対するガバナンスが効いていない。理事会資料の作成負担が大きく、報告事項ばかりで議論が少ない。適正なガバナンスが求められている。

 

以上
 

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