2015/9/15(火)「持続可能な調達」に関する勉強会 開催報告

2015年9月15日、地球環境パートナーシッププラザにて、「ISO20400 (持続可能な調達) 規格および東京オリンピック・パラリンピックに向けた持続可能な調達勉強会」を開催しました。
まず司会のAAR Japan[難民を助ける会] 事務局長堀江良彰氏より、本勉強会の簡単な趣旨説明の後、ゲストの冨田秀実氏(LRQAジャパン 経営企画・マーケティンググループ統括部長)による「ISO20400(持続可能な調達)の概要と開発状況」と題した講演にうつりました。

「ISO20400(持続可能な調達)の概要と開発状況」
冨田秀実氏(LRQAジャパン 経営企画・マーケティンググループ統括部長)

冒頭、冨田氏から勉強会の背景として、持続可能な調達が世界的に注目を集めていること、東京オリンピック・パラリンピックの調達にも高い基準が求められることが挙げられました。冨田氏は、近年、国際的なCSR関連イニシアティブ、業種別行動規範、様々な持続可能性に関わる認証スキーム等、様々な基準がやや乱立気味だったにもかかわらず、取り組みの基本となる考え方が抜けていたとし、ISO20400は、そこを埋めるものであると述べられました。

ISO20400は、約3年前、フランスとブラジルの規格協会から“sustainable purchasing”として提案されたものです(フランスではすでに同様の国内規格を作成)。ISO規格策定の第一回会合では、名称が“sustainable procurement”に変更されるとともに、スコープの変更が承認されました。第二回会合からは、日本も正式メンバーとして登録し(経産省から2名)、CDステージ(委員会原案)を検討しました。冨田氏は第三回会合から日本代表として参加、ここでは再度CDステージの検討を行いました。第二回、第三回と二回続けてCDステージを検討した理由は、その前のWDステージ(作業文書)を飛ばしたためドラフトの質が低かったからとのこと。この時の主要な論点は、ISO26000をどのくらい盛り込むかということで、「持続可能性(sustainability)」という言葉を主として用いることが決定しました。続く第四回会合では、参加人数が増え、章構成を含むドラフトの大幅修正とともにスコープの変更が行われました。次回会合は2016年4-5月頃を予定しており、順調に進むと2016年冬から2017年春頃に国際規格として発行の見込みです。

ISO20400のポイントは、ISO26000をベースに調達行為に展開するためのガイダンスであること、認証、マネジメント規格あるいは、行動規範や調達基準ではないということです。内容を概観すると、1章スコープ、2章Normative references、3章用語の説明、4章原則と続きます。4.1.2. Transformative and innovative solutionsでは、物を買わない等根本的な発想自体の変換について、またGlobal costでは、ライフサイクルの見直しについて述べられています。5章はトップ・マネジメントが理解すべき部分で、6章は調達部門のマネジメント層向けです。(Table2はプライオリティ付け、Table3はレポーティングのレベルについての図解)7章は購買担当者向け、Annexはまだ流動的です。ISO20400「持続可能な調達」(DIS)超訳は5章、6章、7章をまとめたもので、これだけ読んでもISO20400についてよくわかるとのことでした。

続いて、一般財団法人CSOネットワーク事務局長の黒田かをり氏より「ISO20400へのNPOの参画」と題して、NPO/NGOがISO20400に関わる意義についてコメントがありました。

「ISO20400へのNPOの参画」
黒田かをり氏(一般財団法人CSOネットワーク事務局長・理事)

ISO20400の国内ワーキンググループは、ISO26000の時の幹事会メンバーがスライドする形で、マルチステークホルダー・プロセスを採用しています。NNネットでも、ISO20400へのコメント検討会を過去二回開催し、メールによるコメントも受け付けました。NPOからの提案 ①「公共調達の重要性を規格の中に位置づけるべき」は、現時点ではあまり反映されていませんが、調達カテゴリーのマトリックスに関する提案はアネックスに採用されました。サプライヤーの能力育成については、最新のドラフトに盛り込まれています。

NPOがISO20400に関わる意義は(子どもや少数民族など)vulnerable peopleの観点からのチェックであり、現地の知識や専門性を生かせるということです。黒田氏は、今後は、SDGsや東京オリパラとつなげた議論にするとともに、マルチステークホルダー・プロセスを推進していきたい、としめくくりました。

ディスカッション
司会:川北秀人氏(IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表者)

(以下敬称略)

川北:東京オリンピック・パラリンピック2020(以下、オリパラ)とISO20400の接点は?
冨田:組織委員会の中に調達WGがあり、ロンドンオリンピックの時の調達コードのようなものを作るという方向で議論しています。上位概念はほぼできあがっており、承認プロセスを経てIOCに提出予定です。ISO20400コミッティメンバーのショーン・マッカーシー外部評価委員はロンドンオリンピックにも関わっていたので、ロンドンオリンピックのプロセスがほぼ書かれていると言ってもいいです。ISO20400を最初に使うオリンピックは東京オリパラになると思われます。

川北:G7エルマウ・サミット首脳宣言に「責任あるサプライ・チェーン」が盛り込まれたことで、伊勢志摩サミットでも、調達については論点として浮上するはずであり、重層的な取り組みのきっかけになることを期待しています。

川北:これまでの協議では”Sustainable Development”を用いることになっていましたが、最終的には“Sustainability”になりました。それでは、「個々の会社のsustainability」の問題に矮小化されてしまうのでは?
冨田:Social Responsibilityか“Sustainability”かで議論され“Sustainability”に決定しました。調達関係の人はDevelopmentにあまり興味がなかったようです。(日本は、6ステークホルダー中3ステークホルダーが反対したので投票に棄権しています。)

川北:公共調達の重要性については、どのような議論がなされたのでしょう?
冨田:議論の際、3つのサブグループに分かれました。公共調達はサブグループの議論の中でスルーされたようです。参加者に企業やコンサルが多いので企業目線が強くなっています。提案の仕方を変えて盛り込むことは可能と考えています。
黒田:コメントをつけていく戦略性が問われているのでは?
冨田:日本のコメントは採用率が低いです。その理由は、提案・説明ともにあまりシャープではないことにあります。コメントのクオリティが低いという先入観をもたれているかも。意識してシャープなコメントを出していくという戦略も必要かもしれません。

会場より質疑応答

Q:ISO20400と同様の規格を国内で進めているフランスやブラジルでは強制力のある規格なのでしょうか?
冨田:フランスでは国内規格や公共調達の法律もありますが、連動しているかは不明です。日本でもグリーン購入法はありますが限定されています。本当の意味でのリスク対応ができているかは疑問です。G7を皮切りに先進国の中で広がっていく可能性はあります。

Q:国内WGの中にJICAや外務省は組み込まれているのでしょうか?
冨田:経産省の中の標準化のグループのみが関わっており、JICAや外務省は巻き込んでいません。省庁横断的な取り組みに期待したいです。

Q:コストについて。
冨田:欧米企業のような徹底的な監査をするとコストはかかります。コストとベネフィットは裏表で、企業リスクへの配慮の観点から考えるべきです。アパレルや小売では、ブランドを棄損するリスクが高く、IRに響く可能性もあります。ユニリーバはサステナブルな調達をすることで企業価値を高め、業績を向上させています。

黒田:国際機関も調達のガイドラインを作成していますがISO20400の動きにはコミットしていません。コミュニケーションしなければならない認識はありますが。国際的な公共調達の議論が必要なのではないでしょうか。

川北:各自治体が個別に条例を作って、持続可能な地域づくりに結びつけようとする動きもあります。しかし、そういう動きを国を挙げて取り組まないと、日本企業は実をとれないのではないでしょうか?
冨田:そもそも、何のためにするのかわかっていないのではないでしょうか。目的意識が定まっていないのです。だからどこまでやっていいのかわからない。ISO20400の貢献は、組織の戦略づくりが大切だと論じているところにあります。やる必要がない会社もあるかもしれません。

冨田:NGOから日本企業へのプレッシャーが少ないですね。ソニーは海外売上75%(うち欧米50%)であったため、調達への取り組みは至極当然であったが、日本の中では必然性が感じられない。日本企業が変わるためには、日本社会が課題を認識する必要があります。欧米では、バングラデシュのラナプラザの事件(参考:ヒューマン・ライツ・ウォッチ)に対して一ヶ月ほど議論が続いていました。日本企業が取り残されないためには、世界標準の世論が盛り上がっていく必要があり、そのためにはNGOががんばる必要があります。

川北:わずか5年後に向けて、ヨーロッパやアジアでの事業がさらに拡大することになるのであれば、取り組みは不可欠です。規格があるから取り組むという受動的な姿勢ではなく、積極的に取り組み規格で加速することが重要。よりよい日本社会づくりへと導かれることを期待したいですね。

(文責:一般財団法人CSOネットワーク 長谷川雅子)

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